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平岡正明に関する七つのメモ1

平岡正明に関する七つのメモ1

『韃靼人宣言』1964初刊 1972.10ユー・エンタープライズ出版局


 犯罪学は、どんな意味にしろ、国家に奉仕する。それを転覆する方法はあるのか。
 ベンヤミンの「暴力批判論」は、被抑圧者による神聖な暴力の正当性を希求した。平岡は同じ道筋において「あらゆる犯罪は革命的である」という観念に突きあたる。「あらゆる人間の歴史は階級闘争の歴史である」というマルクス主義の定理に沿った発見だ。さらにいえば、六〇年代ブント・マルクス主義の振幅から産まれた「最強」の戦闘性だ。
 あとに平岡は、この第一作品集におさめられた小説を、日和見だったと自己批判している。それはおそらく正しいのだろう。日和見とは「犯=革テーゼ」の深淵に平岡が怯んだことを語っている。



 『北米探偵小説論21』の「ブラック・ノワール」の章を書くにあたって、平岡本を再度参照する作業は採らなかった。記憶のなかに引っかかっている事柄はべつにして、再読していくと平岡の「魔界」に引きずられていく予感が大きかった。

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