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涙香33回忌の記録

涙香33回忌の記録

 江戸川乱歩の『探偵小説四十年』は、「涙香心酔」の項目からはじめられていて、乱歩における涙香の衝撃がいかに決定的であったかを伝えてあまりある。
 その乱歩が大きくかかわって、黒岩涙香の三十三回忌の年(1954年)に、涙香復活のためにいくつもの試みを立ち上げた。
 ①涙香記念祭。講演と文士劇、および涙香展。
 ②雑誌『宝石』の追悼座談会。
 ③現代語訳(乱歩による)涙香全集全十二巻(プラス別巻)刊行。
 全集刊行が機縁となって、①②が計画された。


 そうしたわけで、『探偵小説四十年』の「昭和二十八・九年度」の章は、熱度にみちている。①は同書の記録や写真からうかがい知ることが出来る。②は古書を追跡すれば読める。しかし、肝腎の③はーー。
 これは跡形もないのである。
 「昭和二十八・九年度」の章は、あたかも乱歩の短編怪奇小説のようにも鑑賞できるが、オチは出版社倒産のうらぶれた情景でもの悲しい。
更新日記2023.09.23

 画像は『宝石』1954年5月号に載った出版予告。

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